今週の一週一言 9 月24日~9月29日 人は運命を避けようとしてとった道で しばしば運命にであう ラ・フォンテーヌ・・1621~1695。フランスの詩人。有名な格言に 「すべての道はローマに通ず」がある。 【如是我聞】 大げさに言うと、私は生まれながらにして、歩むべきレールを敷かれた 運命 ( さだめ ) の元にいのちを与えられた。ずっとそう思 っていた。「おまえは将来、こういう職に就くのだ!」と、親からはもちろん、周囲の誰からも言われ続けた。 私がどういう人間で、どういうことに興味・関心があり、どういうことに 長 ( た ) けているかなど、そんなことを考えても無駄でしかなかった。私の青春時代はそんな閉鎖的な思いに、時に苦しみ、時に絶望を感じながら過ぎて行った。あがきにあがいてたどり着いたのは、何をしても無駄だという「無力感」だった。 高校を卒業した私は家から逃げた。日本にいては逃げきれないと思い、二十歳の時、遠くヨーロッパまで逃避した。しかしそこで、逃げ切ったはずのもの、「宗教」に出会ってしまった。 ヨーロッパ初日、パリの駅で10人ほどの強盗に囲まれた。もう駄目だと思ったその時に全身黒ずくめの男性に救われた。彼は強盗に積極的に話しかけ、私を解放するように説得した。すると信じられないことに、強盗たちは私にうすら笑いを残しては一人また一人と去って行った。2人きりになった駅前の公園で、彼はびっくりするほど素敵な笑顔で、たった一言“ Bon voyage! (いい旅を)”という言葉を残してその場を後にした。 興奮と緊張と意味不明の展開に、私はしばらくベンチから立ち上がることができなかった。やがて電車の時間がきて駅に入って売店でコーヒーを買った。お金を出す手はまだ震えていた。コーヒーを一口飲んだら、今度は全身が震え始め、ついには泣いてしまった。いったい何だったのだ、さっきの出来事は。 夜行列車に乗ってスペインに向かった。眠れぬまま朝を迎え、バルセロナの駅に降り立った時、あまりにも非現実的な一日と、それでもまだ生きているという事実に力なく笑っていた。体は疲れていたが、不思議と心は元気だった。 全身黒ずくめの彼はカトリックの神父さんだった。「宗教に生きるということであの笑顔が得られるのなら、
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