一週一言インデックス

2016年5月31日火曜日

我必ずしも聖にあらず 彼必ずしも愚かにあらず 共に是れ凡夫ならくのみ

今週の一週一言
                                  5月30日~6月5日

 我必ずしも聖にあらず 彼必ずしも愚かにあらず 共に是れ凡夫ならくのみ

聖徳太子・・・多くの寺院を建立し、『三経義疏』を著すなど日本仏教の興隆に力をつく
す。「憲法十七条」より。
                   

【如是我聞】
以下は司馬遼太郎の回想文を要約したものである。
国語の先生が、『平家物語』の一文の中にある「凡夫」という言葉を説明された。その説明をされる前にまず、「どういうことか」と、きかれた。予習をしていたため、自信があった。辞書には、「つまらぬ人」と説明されていた。勢いよく、「つまらぬ人です」と、答えると先生も「そう、そのとおりや」と、うなずかれた。国語の解釈としては、これで十分だった。「ところで凡夫とは誰のことや」と、先生は重ねて質問された。みんなとまどい、「誰のことやろ」と、お互いクラスメートを見まわした。「あいつやろか」と多くの視線を集めたのは、不良化していた一人のクラスメートだった。「誰のことや」と、先生は、さらにみんなを見まわした。みんな、困ってしまった。自分たちのクラスの中から、「つまらぬ人」などを指摘するのは悪いと思ったからである。「分かりません」と、みんな答えた。
すると先生は、おどろくべき正解を用意されていた。「凡夫とは、つまりわれわれのことやな」と。「先生も?」「そうや、凡夫や」。先生がつまらぬ人か、とびっくりしてしまったが、「ところで、日本歴史上の人物の中で、誰が最初に凡夫であると悟られたか」ときかれた。中学二年の子どもには無理な質問だったが、みんな懸命に考えた。先生がいわれた。「その人が、日本の歴史の中で、もっとも偉大な発見をした人や」。自分が凡夫だと知ったことが、それほど偉大なことなのか、私どもにはわからなかった。「それは、法然上人と親鸞聖人や」と先生はいい、「今は無理かも知れんが、大人になったとき、もう一度いまのことを思い出して、考え直してごらん。よく分かる」。そういわれたことが、今でもありありと思い出せる。「凡夫」という言葉のもっている深刻な意味は、今の歳の私にもまだ分からない。これは一生の仕事なのかもしれないが、やはりこういうかんじんなことの種を幼少のころに蒔いてもらったのは、やはり宗門立の中学校(上宮中学校)に学んだからであろうかと、今になって改めて振り返っている。


こんな授業ができたらなあ。                (宗教・社会科:山田)




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2016年5月9日月曜日

善行の報酬は 善行を行ったことである

今週の一週一言
                                  月25日~5月8日
  善行の報酬は
善行を行ったことである
ルキウス・アンナエウス・セネカ
現スペイン、コルドバ出身。紀元前1年~65年、ローマ帝国の政治家。皇帝ネロの幼少期の家庭教師。ストア派哲学者としても著名。ラテン文学を代表する詩人でもある。著作は『幸福な人生について』・『寛容について』など多数。
















【如是我聞】
 善行とは、善とは何ものであろうか。善きこととは何なのか。
 以前、電車で席を譲ろうとして、ひどく相手を不愉快にさせたことがあった。その相手とは、(いささ)恰幅(かっぷく)の善い女性であったのだが・・・。
 では、電車で席を譲ることは善いことなのか、悪いことなのか?答えが出ない。
 (あたか)(あらかじ)め善いこと悪いことが存在しているかのように思い込んでいたのだが。善悪を決定すること、これを倫理という。道徳とも呼ぶ。試みに倫理を辞書で引いてみる。
倫理・・・①人のふみ行うべき道。②(個人や組織ごとに考えられた)道徳の規準。モラル。
なるほど、いくつもの善悪が同時に存在できるようだ。しかし、これは厄介なことではないか。善と悪のぶつかり合いならまだしも、善と善のぶつかり合いも可能なのだ。
「善悪の字知り顔は 大虚言のかたちなり」とは宗祖の言葉である。あらためて噛み締めた。善悪を問題にしているのではない。善はこれで悪はこれだ、と決定することを問題にしているのである。
「善悪の二つ、総じてもって存知せざるなり」、これが宗祖の立ち位置であった。
 本校には「宗教」という授業がある。道徳とは似て非なるものである。善いことをしよう、悪いことはするな、ではない。では、何をしてもよいのか。そんなことはあるはずがない。ただ、善悪に(こだわ)りながら傷つけ合う私たち自身を、真向かいに見つめるということだ。
 席を譲るべきか否か、考えているうちに駅に着いてしまった、―そんな時間が週に50分あってよい。いや、あるべきだ。

(国語科・宗教科:曽我)




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内に目をむければむけるほど 外の世界が広がってくる 不思議な目

一週一言 9 月 4 日~ 9 月 10 日                                   内に目をむければむけるほど 外の世界が広がってくる 不思議な目 鈴木章子    鈴木 章子 ( あやこ ) ( 1...