一週一言インデックス

2021年4月26日月曜日

朝あしたには紅顔ありて 夕ゆうべには白骨となれる身なり。

今週の一週一言

                                  419日~425

(あした)には紅顔ありて (ゆうべ)には白骨となれる身なり。

蓮如                                

蓮如(1415-1499

 室町時代の浄土真宗の僧侶。本願寺八代門主。衰退の極みにあった本願寺を再興し現在の本願寺教団の礎を築いたことから、「中興の祖」と呼ばれる。

【如是我聞】

豪快に笑い、大袈裟なリアクションで「オオォー!」って気持ちよく叫ぶ男だった。出会いは、入学してまもない大学キャンパスだった。誰か1万円札を崩してくれないかなぁと歩いているところに通りかかったのが彼だった。見かけたのは初めてではない。入学式から目立っていた。ごつい。胸板厚くがっしりとした体格。サラサラヘアーに、太い眉。そしてギョロっとした目。只者ではない。一度見たら忘れられない男である。その彼がのしのしと独歩していた。少し躊躇ったが、好奇心が勝ち恐る恐る声をかけた。「オオッ、イイっすよ!」思ってもみなかったほど元気で爽やかな返答にびっくりした。

その日の夜、彼は私の下宿にいた。下宿の前で偶然出会ったのだ。今回は全く躊躇わず声をかけた。「一緒に飯を食おう!」「おおッ、いいすよ」朝まで語りガハハと笑い転げた。やめて欲しいと言ったけれど、私には常に敬語を使う。現役入学で、私より一歳年下だから。体格がいいのは、中学生から続けているラクビーのせい。地元はフカヒレの寿司がうまいんすよって教えてくれた。

私の下宿にラクビー部部員が何人かいることもあって、それからというもの彼は練習が終わったあと毎日のように立ち寄ってくれた。「オオォー!増田さん」「増田さん、それいいっすね!ガハハッ!」何かにつけ私の名前を呼んでくれる。彼に名前を呼ばれると優しい気持ちになった。

大学4年間、彼の豪快な笑い声と彼の「オオォー! 増田さん。」を身近に聞いていた。正月に京都に泊まりにきて、白味噌のお雑煮を初めて食べて「オオォー!」。凍結した真夜中の山道。私の運転する車がスリップして壁に激突しかけたときは、助手席からボリュームマックス「オオォー!マ・ス・ダさん!!」。蛇行を繰り返し、やっと停車した車の中で二人大笑いしたなぁ。

卒業して彼は地元に戻り小学校の先生になった。年賀状のやりとりだけになってしまったが、繋がっていた。4年間ともに過ごした日々がそう確信させてくれていた。小学生と一緒になって、「ガハハッ!」「オオォー!○○。」って全力でリアクション、そして一生懸命に過ごしている姿が手にとるようにわかる。数年経って彼は大学時代から付き合っていた慶子ちゃんと結婚し、二人の男の子をもうけた。一度、彼のところに遊びに行ったことがある。元気すぎる息子たちに「こいつら大変なんすよ、増田さん。」と幸せそうにタバコを吹かす彼が眩しかった。

 

あの日、彼は飲み込まれた。彼を心配で家に戻った慶子ちゃんも飲み込まれた。何もかも黒い水に飲み込まれた。そして流された。2011311日。「オオォー!」悲しい叫びだけが私の中でこだまする。

(英語科 増田)





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