一週一言インデックス

2017年3月27日月曜日

智に働けば角が立つ 情に棹させば流される 意地を通せば窮屈だ 兎角に人の世は住みにくい

今週の一週一言
                                  3月27日~4月3日

 智に働けば角が立つ 情に棹させば流される 意地を通せば窮屈だ 兎角に人の世は住みにくい
夏目漱石・・・19051916 明治時代を代表する小説家・評論家・英文学者。
                   
【如是我聞】
大切なお皿を自分で割った時、「あーあ、やっちゃった!もったいないけど、しかたないなあ。」と、割れたお皿を惜しみながらも諦める。ところが、自分以外の人がやってしまうと、瞬時にぶちキレて、「なんで割ったん。大事にしてたのに!!」と叫んでしまう。同じ行動のはずなのに、他人にはキレてしまった自分が後でいやになる。そんなことが何度か繰り返される内に、「形のあるものは壊れるんだ」と自分の中で消化できるようになり、他人の行動の失敗も許せるようになる。他人よりも、〈怒り〉を爆発させてしまうという自分がいちばん厄介な存在である。
 また最近、「おめでとうございます。あなた様は当方で実施した抽選において5000万円を当選されました。」という文面が、メールに届いた。ドキッとして、「えっ、もらえるの?5000万円あったら、家のローン払って、車も買って、海外旅行もできるなあ。」なんて、甘い夢を抱いてしまう自分がいる。しかし、現実はそんなに甘くもなく、そのメールには「あなたの銀行の通帳番号と誕生日を教えてください。」と書かれている。間違いなく詐欺だ。普段、暮らしていけるだけのお金があり、みんなが健康であったらいいやと、シンプルな生活が自分の中では居心地いいと思っていたのに、そんな欲深い自分が表れて恐ろしくなる。「お金」という人間が作りだしたものに振り回されている。
 人間というものは本当にややこしい。自分で正しいと思っていることも、他人の価値観と違えば、それは正義ではない。例えば、自分では相手のことを思い遣って行動しているつもりでも、相手が不快に思ってしまえば、迷惑な行動以外のなにものでもない。放っておけば、「誠意がない」と言われる。やりとりが上手くいかず、信用を失うと、がんじがらめになって、全く動けなくなる。
 夏目漱石は、上の文の続きに、「住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、()ができる。人の世をつくったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向こう三軒両隣りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。」とある。
 人でなしの国には行きたくないし、ただの人の世で、厄介なただの人である自分を見つめつつ暮らしていきたい。

(国語科 峯松)




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2017年3月22日水曜日

もうひとりのあなたがあなたをみているのよ  見放されないようにね 嫌われないようにね

今週の一週一言
                                  321日~326
 もうひとりのあなたがあなたをみているのよ
            見放されないようにね 嫌われないようにね
                    ミイ 
ミイ・・・ムーミンファミリーと一緒に屋敷に住む、勇敢で怖いもの知らず、好奇心旺盛な女の子。


【如是我聞】
 私の出身高校のトイレには貼り紙があった。「神様はいつも見ている。そっと見ている。じっと見ている。」これがすべてのトイレの個室中に貼ってあるのだ。この恐ろしい光景に慣れることは三年間なかった。意図は分かるものの、違和感しか持てないこの貼り紙を見る度に、当時高校生だった私は、神様は変な趣味があるのだなと、友人と面白半分に神をからかっていたものだ。あれから数年、あの神様は自分自身の良心だったのだと、ミイに改めて思い知らされた。
「もうひとり」の自分が自分をみている。ここでの「もうひとり」というのは、未来の自分かもしれないし、過去の自分かもしれない。もしかすると、今の自分を客観的に見ている自分なのかもしれない。私は、自分の中に二人の自分が同居していると思っている(多重人格という意味ではない)。一人は周囲の目を気にしながら他人に合わせて行動する自分。もう一人はわがままで自由奔放な自分。これは本音と建前の関係と似てはいるが、少し違う。周囲の目を気にする自分も「嫌なやつ、駄目なやつだと思われたくない」という本音から生まれたものだ。つまり、どちらも自分の本当の姿なのだ。
 この二人が心の中で喧嘩を始めると、自分のコントロールがきかなくなる。私の場合は、周囲を気にする自分が出しゃばりすぎて、自由奔放な自分を圧迫する。そして、窮屈になった後者の自分が泣き叫び、わめき散らす。それからふてくされて口をきいてくれなくなる。こうなったら他人の手を借りずして事態はなかなか収束しない。このような体験が今まで何度かあった…。
センター試験前、休日は家で勉強していた。日曜、自分の部屋に籠もって必死の形相で机に向かう私。母は私の部屋に幾度となく押しかけて来た。そのたびに集中力はとぎれ、私は怒っていた。なぜかというと、母はいかにもお気楽そうに「買い物に付き合って」「一緒にドライブしよう」「温泉に行こう」という、入試直前の受験生に不向きな提案ばかりしてくるからである。こっちは勉強で手一杯なのに、一体なんのまねなのか、本気でそう思っていた。どうやら母なりに私を気遣ってくれていたようで、無意識のうちに私の中の二人の暴走を阻止しようとしてくれていたのだ。普段の母は何を考えているのかよく分からない不思議な人間だが、私以上に私のことをよく分かっているのかもしれないと、今になって強く感じる。今日もコーヒー片手に一点を見つめながら微笑み、そして頷いていることだろう。

母もそうだが、私の周りには自分が「もうひとり」の自分に見捨てられそうになった時に助けてくれる心強い味方がたくさんいる。ミイの言うように、もうひとりの自分にみはなされないように、嫌われないよう努めてはいるつもりだが、万が一のことがあれば、この心強い味方たちを頼りにしたい。頼れる人がいるということは、本当にありがたいことだとつくづく感じる。     (国語科 倉島)




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内に目をむければむけるほど 外の世界が広がってくる 不思議な目

一週一言 9 月 4 日~ 9 月 10 日                                   内に目をむければむけるほど 外の世界が広がってくる 不思議な目 鈴木章子    鈴木 章子 ( あやこ ) ( 1...