一週一言インデックス

2017年6月19日月曜日

すぐれたところがありながら疎んじられる人がおり、欠点だらけでも好かれる人がいる。

今週の一週一言                  
月19日~6月25日
すぐれたところがありながら疎んじられる人がおり、欠点だらけでも好かれる人がいる。

ラ・ロシュフーコー(1613-1680
ラ・ロシュフーコー公爵フランソワ6世。フランスの貴族。名門貴族の出身であり、多くの戦いに参加した後、「考察あるいは教訓的格言・箴言」、いわゆる「箴言集」なるものを執筆したモラリスト文学者。彼の言葉の中に見られる辛辣な人間観は、リシュリューやマザランといった政敵との争いに敗れ味わった苦難が反映されているものとみられる。
【如是我聞】
 趣味の模型に興じている時が、最も集中できて最も心安らかでいられる時間だと思う。一つ一つの部品を丁寧に切り取り、磨き、色別に分けていく。完成品を心に描きつつ、慎重に着色していく。想像力を働かせながら、ワンシーンを再現させていく。出来上がりにうっとりしながら、ふと一か所、ミスに気付く。さほど目立たないところなのでこのままでもいいかと妥協しようとするが、一度気になった欠点は心に影を落とす。
 完璧なものは美しい。一つの無駄もない数式、完璧に整えられた定型詩、完璧に設計された建築物、人は完璧に憧れる。正確な図形、流れるようなフォルム、透き通った発声。
しかし、一方で、不完全なものにいとおしさを感じる。それは、人間が不完全だからだ。その不完全さを個性という。不完全は、無限の可能性を秘めている。完成したものはそれ以上にはならない。不完全を残した人間は、人間のまま成長できる。進化といっていい。
 大人から見れば、子どもはより不完全だ。大人は自分のことはそっちのけで、不完全な子どもの、その不完全さに腹を立てる。それはまるで、子どものころには持っていたが、大人になるにつれて自分から捨てて行った可能性の塊である不完全さに、嫉妬でもするかのようだ。
 無論のこと、私の娘は完璧とは程遠いところに存在するが、私の厳しいしつけに対し、いじらしくも応えようと努力するところが、今のところ、ある。娘のために完璧な人生を用意してやりたいが、当然のことそんなものはない。ちょっとだけ独り立ちしたくて、一人で寝ると豪語しては、五分後にさみしいと言って泣きながら私を大声で呼ぶ。なんて不完全でいとおしい存在なのだ。
自己に対しても他者に対しても、完璧を求めるのは、人間の憧れだ。
 マンガやアニメの主人公も、ひと昔前まで、最初からすさまじい能力を持った「憧れ型」の主人公が多かった。最近になるにつれ、どこにでもいるような身近な存在に感じる主人公が多くなってきた。「共感型」という。読者は、共感型の主人公に自己を投影しつつ、やがて努力と友情で勝利をつかんでいく主人公のようになりたいという憧れを抱く。
 芸術作品や文学作品の中でも、わざと未完成のままにしておくこともあるらしい。不完全さが、無限の可能性を想起させる手法だろうか。
 手元にある自分の作品の欠陥を、自分らしいミスだと愛着を抱きながら、とはいえ、このままというのもなあと、ため息をつく。直すか直さないでおくか、しばらくそんなことを思案しながら、私の休日は過ぎていく。

(国語科 林原)




トップページへ http://www.otani.ed.jp

内に目をむければむけるほど 外の世界が広がってくる 不思議な目

一週一言 9 月 4 日~ 9 月 10 日                                   内に目をむければむけるほど 外の世界が広がってくる 不思議な目 鈴木章子    鈴木 章子 ( あやこ ) ( 1...