一週一言インデックス

2024年1月29日月曜日

どうにもならないことなんて、 どうにでもなっていいこと


今週の一週一言

月29日~2月4日

どうにもならないことなんて

どうにでもなっていいこと

甲本 ヒロト

甲本 ヒロト(19631年~)

 シンガーソングライター。1985年、THE BLUE HEARTSを結成し、1987年に「リンダリンダ」でメジャーデビュー。1995年に解散した後、1995年にTHE HIGH-LOWS2006年にザ・クロマニヨンズを結成。数多くのヒット曲を世に送り出す。

【如是我聞】

春が嫌いだ。生暖かい空気、新しい年度、新しい環境、新しい出会い。すべてがおぞましく感じる。

 ふりかえれば、春に機嫌がよかったことなど一度もない。今までのどの入学式の写真も不機嫌な顔で写っている。

 あと2、3ヵ月で春が来てしまう。また少しずつ春に向けて構えはじめている自分がいる。なぜ構えてしまうのか、少し心当たりがある。

 自分の性格は前向きで楽観的であると思っている。大体はどうにかなるやろ~、なるようにしかならんって~と思っている。それが不思議なことに新年度を迎えてしまうと、完璧な人間になろうとする。さあ今年度はもう少しマシな人間になろう、心が穏やかで落ち着きがあって、おしゃべりも控えて周りから大人っぽいと思われるような人間になろう、と意気込むのである。誰しも新しい年を迎える時に抱負を抱くものだと思う。私の場合、もはや私のもともと持ち合わせている要素をすべてなくして、到底達成できそうもない理想の自分を作り上げてしまう。その理想像から少しでもはみ出てしまうと、どうにもならないことなのに心に決めた目標も達成できないダメな人間なんだと落ち込む。春だけは何でも完ぺきにこなさないといけないような気持ちになる。すこしでも最初で失敗してしまうとこの年のすべてが台無しになってしまうという強迫観念に駆られる。それだけにとどまらず、失敗して目標も達成できない自分は周りからいい評価を受けられないと思い込み始める。期待していた様な人材じゃなかったとがっかりさせるに違いないと負の感情のループに陥ってしまう。これが春の儀式である。

 今年の春はまた慣れない環境に身を置くことになる。心を軽くするためにもどうにもならないことを気にするのはやめてみてもいいのかもしれない。具体的にどうすればいいかは正直全く思いつかないが、幸い私には頼りになる家族、友人、同僚がたくさんいる。結局一人では何もできず、支えがないと生きいけない不完全な私がいる。そんな周囲の支えに感謝しつつ、助けを借りて、この春は心を軽くして過ごしたい。

(英語科 兼田慈)





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2024年1月22日月曜日

心から何かを望むのは、 そんなに簡単なことじゃない。


今週の一週一言

月22日~1月28日

心から何かを望むのは、

そんなに簡単なことじゃない。

村上 春樹

村上 春樹(1949年~) 京都府出身。1979年に『風の歌を聴け』でデビューし、数多の作品を世に輩出している。日本国外でも人気であり、芥川賞の受賞が期待されている作家である。また、デビュー以来、翻訳活動も精力的に行っており、翻訳家としての業績も高い。

【如是我聞】

友達が新年の挨拶に東京からやってきてくれた。近所の神社に初詣にいく。

 ていねいな字で書かれた絵馬がたくさん下がっている。

「戦争が終わりますように」

「しばらく前の世の中にすっかりもどりますように」

 うんうん、そうだよね、とうなずきながら読んでゆく。

「かにさされませんように」

 かわいい……。ひらがなだけなのがいいなあ。この時期でも刺されちゃうなんてねぇ。

「宿題がもっと出ますように」

 えっ。

「ねこになれますように」

 かわいい……のだろうか? それとも、人間ではいたくない理由が何かこの人にはあるのだろうか?

 最後に、一番の達筆で書かれた、

「弟がましな人間になれますように」

 という絵馬を読みつつ、それまで少しずつしていた後じさりを大きくまた一歩おこない、音をたてないよう、そそくさと去る。

家に帰ってからは、絵馬のことは考えないようにして過ごす。絵馬に願いを託すということ。願うこと。うーん。

意識しないようにしてもついつい心から自分が望むことについて考えてしまう。

それで、考えこんでいると、こんなに長い時間も、お金も、手間もいろんなものをかけて、子どもを育てて、たったひとつほんとうに学んだことは、「心から譲ることができる」ということだけだということに行き着く。

おいおい、本当なの?それ以外に何か成長してないの?と聞かれたら、とても情けないけれどそうだと言ってしまう自分がいる。

たとえば、ユニバーサルスタジオに行き、さぁ、いよいよ自分が乗る番だとする。そんなドキドキ最高潮なときに、5歳くらいの子が来て、「おばちゃん、先に乗らせて」と言われたとする。

もちろん若いときの私も譲ってあげただろう。でも、ちょっとだけ頭の中で考えると思うのだ。ほんの数秒。「やっぱり小さい子とはりあったらまずいだろうな」とか。

それが、全くためらいなく、体と心が同時に動いて、いいよって脇によけるようになった。ただそれだけのことに、こんなに時間がかかるなんてどうなの?エゴが強すぎ?と思うのだが、すごい変化だと言えなくもないので、すごい変化だね、と自分で思っている。

もうこんな年齢になってきたので、量、とにかくたくさんの物に囲まれるのではなく、いつのまにか好きな物を厳選して選ぶようになってきている。ピアス、シャーペン、洋服、バッグ、靴など。でもそれらも、娘が欲しいと願えばなんのためらいもなく譲れると思う。大好きなキルフェボンのイチゴタルトも、はい、どうぞ。

それでは大切にしたいものとは、なんだろうか。

難しいことかもしれない。でも季節はいつも味わっていたい。季節の味わい方は食材だけではない。

陽の光でも季節を体で感じられる。学校にいると、夏場の17時はまだ明るいのに、冬場はもう暗い、というように。忙しくて四季を感じられなかった経験がしょっちゅうあるが、四季を感じ、自分を大切にしたい。

そのためには軽やかでいて、自分ルールで縛ることばかりにならないようにしたい。自分が責任を取れる範囲で、自由でいたい。

(須藤か)





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2024年1月17日水曜日

点が将来結びつくと信じなくてはいけない。 信じるものを持たなくてはいけないんだ。



今週の一週一言

月15日~1月21日

点が将来結びつくと信じなくてはいけない。

信じるものを持たなくてはいけないんだ。

Steve Jobs

Steve Jobs19552011

 サンフランシスコ生まれ。Appleの創業者・元CEONeXTの創業者・元CEOPIXARの元CEO。スティーブウォズニアックとともにApple社を創業。Macintoshの開発を主導しGUIやマウスをもつパーソナルコンピュータという概念を普及。iPodiPhoneiPadを発表し音楽、通信業界など世界中に大きな変革をもたらす。PIXAR社では世界初の長編CGアニメーションであるToy Storyを制作。

【如是我聞】

随分前の授業でのこと。「今習っている数学は、将来何の役に立ちますか?」と質問をする生徒がいた。その生徒は、役に立たないのなら勉強する意味ありますか?という意味で聞いている様子である。たまに聞かれることがあるその問いに、私はいつも敢えてハッキリとこう答えることにしている。

「特に何の役にも立たないよ」と。

予想とは真逆の答えに、その生徒は呆気に取られ言葉を失う。

そもそも学校で、役に立つことだけを学ぶわけではないのだ。役に立つこと以外は取り組む意味がないのなら、一生懸命やっているクラブ活動もほとんどやる意味がないことになりはしないか。実際、シュートを上手に決められることやボールを上手く打ち返すことなど、それ自体が将来特に何かの役に立つわけではない。しかし生徒たちは、今の自分の成長にとってとても大事なことだということについては根拠のない強い確信をもって取り組んでいるはずだ。芸術などもしかり。つまり、体験したことや学んだことから何を掴み取り生かすのかはすべて学んだ本人にかかっているわけで、実は本人の問題なのだ。

だから、要約すると「知らんがな」というのも正解の返答になるのではないかと思う。

ただ、生徒たちに「知らんがな」と言うわけにもいかない(説明から逃げていると思われる)ので、少し話をし、そのことに気づいてもらうと生徒たちは納得をする。 知らんけど。

何かを本当に「学ぶ」とき、役に立つという価値観の優先順位は、大抵の場合において高くない。

今、自分のしていることが将来にどう繋がるのかは誰にもわからない。それは結果論だから。一生懸命練習しても試合に勝つことを確約されはしないのと同じだ。だから不安なのだ。本当はやっても無駄なんじゃないか、だが考えてもわかるはずがない。やってみないことには始まらない。そこで初めて「本当の学び」が起動するのだ、と内田樹さんがおっしゃっていた。どうなるか分からないことに踏み出そうとすることこそが「本当の学び」の始まりなのだ。

だから、これは大事そうだ、これは面白そうだ、と感じる瑞々しい「感性」が大切になる。「感性」を育むには学び続け、直感を信じて挑戦し失敗も恐れずに進む日々も過ごしてみることだ。だがそれも一つ一つが「点」でしかないから、しんどい思いをしてまでやらなくてもいいのではないか、とふと考えてやり過ごしたりもする。だからといって不安はなくならない、無視できない。だが不安と向き合うことは悪いことばかりでなく、生きていく上での大事なことをたくさん教えてもくれる。そうして「自分」が育まれていく。

私も、これまで無駄なようなことや失敗はたくさんしてきたと思う。だから、

「点が将来結びつくと信じなくてはいけない。信じるものを持たなければいけないんだ。」

Steve Jobsは私が愛してやまないAppleの創業者の一人だ。この言葉は、彼が米スタンフォード大学の卒業式に招かれたときのスピーチの一節である。彼には生みの親と育ての親がいた。大学は中退し、その後数ヶ月は大学の好きな授業だけを受けた。Appleを一度クビになった。それでも彼は様々な「点」が繋がることを信じ続けたのだ。彼の人生観とともに語られたこのスピーチには傾聴すべき言葉が多い。

最後に、私事だが、昨年結婚25年を迎えた。本当にそんなに経ったのかなと、その日2人で笑い合った。

点は結びつき未だ来ぬ先へ伸びていく…と信じ続けなくてはいけない。

それが人生なのだ。  知らんけど。                   

 (数学科 嶋村)


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内に目をむければむけるほど 外の世界が広がってくる 不思議な目

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