今週の一週一言 1月15日~1月21日 点が将来結びつくと信じなくてはいけない。 信じるものを持たなくてはいけないんだ。 Steve Jobs Steve Jobs(1955~2011) サンフランシスコ生まれ。Appleの創業者・元CEO。NeXTの創業者・元CEO。PIXARの元CEO。スティーブウォズニアックとともにApple社を創業。Macintoshの開発を主導しGUIやマウスをもつパーソナルコンピュータという概念を普及。iPod、iPhone、iPadを発表し音楽、通信業界など世界中に大きな変革をもたらす。PIXAR社では世界初の長編CGアニメーションであるToy Storyを制作。 |
【如是我聞】
随分前の授業でのこと。「今習っている数学は、将来何の役に立ちますか?」と質問をする生徒がいた。その生徒は、役に立たないのなら勉強する意味ありますか?という意味で聞いている様子である。たまに聞かれることがあるその問いに、私はいつも敢えてハッキリとこう答えることにしている。
「特に何の役にも立たないよ」と。
予想とは真逆の答えに、その生徒は呆気に取られ言葉を失う。
そもそも学校で、役に立つことだけを学ぶわけではないのだ。役に立つこと以外は取り組む意味がないのなら、一生懸命やっているクラブ活動もほとんどやる意味がないことになりはしないか。実際、シュートを上手に決められることやボールを上手く打ち返すことなど、それ自体が将来特に何かの役に立つわけではない。しかし生徒たちは、今の自分の成長にとってとても大事なことだということについては根拠のない強い確信をもって取り組んでいるはずだ。芸術などもしかり。つまり、体験したことや学んだことから何を掴み取り生かすのかはすべて学んだ本人にかかっているわけで、実は本人の問題なのだ。
だから、要約すると「知らんがな」というのも正解の返答になるのではないかと思う。
ただ、生徒たちに「知らんがな」と言うわけにもいかない(説明から逃げていると思われる)ので、少し話をし、そのことに気づいてもらうと生徒たちは納得をする。 知らんけど。
何かを本当に「学ぶ」とき、役に立つという価値観の優先順位は、大抵の場合において高くない。
今、自分のしていることが将来にどう繋がるのかは誰にもわからない。それは結果論だから。一生懸命練習しても試合に勝つことを確約されはしないのと同じだ。だから不安なのだ。本当はやっても無駄なんじゃないか、だが考えてもわかるはずがない。やってみないことには始まらない。そこで初めて「本当の学び」が起動するのだ、と内田樹さんがおっしゃっていた。どうなるか分からないことに踏み出そうとすることこそが「本当の学び」の始まりなのだ。
だから、これは大事そうだ、これは面白そうだ、と感じる瑞々しい「感性」が大切になる。「感性」を育むには学び続け、直感を信じて挑戦し失敗も恐れずに進む日々も過ごしてみることだ。だがそれも一つ一つが「点」でしかないから、しんどい思いをしてまでやらなくてもいいのではないか、とふと考えてやり過ごしたりもする。だからといって不安はなくならない、無視できない。だが不安と向き合うことは悪いことばかりでなく、生きていく上での大事なことをたくさん教えてもくれる。そうして「自分」が育まれていく。
私も、これまで無駄なようなことや失敗はたくさんしてきたと思う。だから、
「点が将来結びつくと信じなくてはいけない。信じるものを持たなければいけないんだ。」
Steve Jobsは私が愛してやまないAppleの創業者の一人だ。この言葉は、彼が米スタンフォード大学の卒業式に招かれたときのスピーチの一節である。彼には生みの親と育ての親がいた。大学は中退し、その後数ヶ月は大学の好きな授業だけを受けた。Appleを一度クビになった。それでも彼は様々な「点」が繋がることを信じ続けたのだ。彼の人生観とともに語られたこのスピーチには傾聴すべき言葉が多い。
最後に、私事だが、昨年結婚25年を迎えた。本当にそんなに経ったのかなと、その日2人で笑い合った。
点は結びつき未だ来ぬ先へ伸びていく…と信じ続けなくてはいけない。
それが人生なのだ。 知らんけど。
(数学科 嶋村)