一週一言インデックス

2020年12月18日金曜日

汝自らを知れ そして汝自分であれ

今週の一週一言

12月7日~1月3日

汝自らを知れ そして汝自分であれ

西光万吉

西光万吉(1895-1970

戦前の部落解放・社会運動家。全国水平社設立の中心的人物で、水平社旗の意匠考案および水平社宣言の起草者として知られる。

【如是我聞】

一年とちょっと前に「身の丈発言」により、長らく教育界を混乱に陥れた大学入試改革は、急速に収束に向かった。まだまだ混乱の渦中だが、それとは別の禍も加わって、すっかり色あせた感がある。多くの非難を呼んだ発言であったが、日本で一番田舎と言われる土地の出身者であった私からすれば、「入試なんてそんなもんだろ」という感想に過ぎなかった。

 この世界に差別はある。様々な差別が取りざたされた一年だったが、もっと根源的な差別だ。スタート地点が明らかに違う。貧乏よりは金持ちの方がいいに決まっている。ブサメンよりはイケメンの方がいいに決まっている。ゴールに向かって、「ヨーイ・ドン」でスタートするが、スタート時期も違えば、スタート地点まで違うのがこの世の中だろう。理不尽この上ないが、しょうがない。

何度か身の程を知った一年だった。それは、自分があまりに無力で無能だと思い知ったことがあったからだ。なんだか一気に年を取った。

 あなたはまだこれからの人なのだからと、優しく微笑みながらおっしゃって下さる方がいる。困惑した笑みで何か返そうとするが、返す言葉が見つからない。心の中では、いやいや僕はもうこれまでの人ですよと、再び身の程を思い知る。

 身の程を知ってしまうと、これが自分の力だと分かってしまう。力の入れ所と抜きどころも分かってしまう。上手に流れに身を任せることを覚えてしまう。そして、身の程を知らない若者たちを、上から目線で笑ってしまう。身の程知らずにも夢や希望を語る若者が、滑稽に見えて仕方がない。

 

いやいや、違うって!身の程を知らないのは若いってことだろ。身の程を知れば知るほど、人間は年を取っていく。自分はこれだけの人間で、これだけのことしかできないから、それ以上のことはやらないって決めた時から、人間は年を取っていく。まだまだこれからですよと、私に語りかけてくれたのは、身の程を知るには、まだ早いでしょうってことだろ。

 なんとなく分かっちゃいるんだよなあ。もうちょっとだけ、一息ついたら、また歩きはじめるしかないか。自分の限界を決めるには、まだもうちょっとだけはやいだろうから。たぶん。

(国語科 林原)





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