今週の一週一言 8月26日~9月1日 古人の跡を求めず 古人の求めたるところを求めよ 松尾 芭蕉 松尾芭蕉・・・寛永21年~元禄7年(1644~1694)江戸前期の俳人。伊賀の人。蕉風俳諧を確立。各地を旅して発句や紀行文を多く残した。旅先の大坂で病没。『野ざらし紀行』、『笈の小文』、『奥の細道』など。 |
【如是我聞】
「まねしぃごんぼ、ごんぼ食(く)て走れ」。
小学生くらいのとき、誰かまねをしたときには、必ずと言っていいほどこう言ってからかわれました。子どもの頃は、どうして「ごんぼ(ゴボウ)」を食って走らなあかんのかなんて考えもしないまま使っていました。今でもなぜ「ゴボウ」なのかはよくわかりませんが…。ただ、そこには誰かのまねをするのはあかんことだという思いがあったんでしょうね。
何かをしようとするとき、失敗はしたくないものです。いや、少なくともぼくはそうです。「失敗を恐れるな」とか「失敗は成功のもと」など周囲からはいろいろと言われますが、やっぱり失敗するのは嫌なものです。
「古人の跡を求めず、古人の求めたるところを求めよ」。松尾芭蕉は、弘法大師の言葉を参考にしながら、この言葉を弟子の許六(きょりく)に贈りました。「古人」とは、過去の偉人でしょうか。昔の偉人たちが、何をしたかという結果ではなく、何をしようとしたかという志(こころざし)を見極めて行動しなさいという意味でしょうか。俳諧や書道、文学や芸術においては、誰かのまねをすることはよくないことかもしれません。しかし、最初は自分が憧れる誰かのまねであってもいいと思います。たとえ物まねから始まったとしても、それをやり遂げようとする過程のなかで、自分が理想とするものが見えてくるはずです。許六もきっと芭蕉の物まねから俳諧を始めたのでしょうから。物まねや失敗したくないという足掻(あが)きのなかから、芭蕉翁が言うように、古人の志を見極められたらいいですね。それまでは「ごんぼ」を食いながら頑張りますか。
(文責:国語科中川)