今週の一週一言 6月16日~6月22日 自分を狂わせ迷わせる敵は内にある 安田理深 安田理深(1900-1982)・・・真宗大谷派の僧籍を持つ仏教学者。 |
【如是我聞】
私の母はいつも楽しそうだ。ニコニコ笑っている。結婚当時、とてつもない田舎に引っ越してきたとがっかりしたらしいが、「でもどうこう言っても仕方ないし、まぁいいか。」と、田んぼ道もルンルンと自転車を漕ぎながら生活していたらしい。家の目の前に高速道路が通る話になり近隣の住民が次々と引っ越していくなかでも、「まぁしょうがないな。」と思ったという。「何も分かっていない。」と皆に馬鹿にされたらしいが。
しかしどういうことか、何年経っても高速道路が建設されることはなく、代わりに徒歩5分の場所に阪急の駅ができた。数年後には徒歩3分の場所にJRの駅が。そしてもうじき家の前に京都府最大級のイオンモールができる。「やったー♪」と毎日窓から工事現場を嬉しそうに見つめる母から、ありのままを受け入れることが最大の強さだということを教えてもらっている。きっと家の周りが田舎のままでも母は何かと楽しいことを見つけて笑っていただろう。わたしが就職で京都を離れるときも泣きながら笑顔で送ってくれた。わたしが京都に帰ってくるときも泣きながら喜んでくれた。駄目だとか、こうしろ、ああしろとは絶対に言わない、しかしいつでもわたしの帰る場所を用意してくれている母には、底知れぬ力があるような気がするのである。
目の前のものを敵にするか味方にするかは自分の思いひとつ。それでもわたしは敵を作り、言いたいことを言わずにはいられない。言わなければ負ける気がするから、後からその話をまた取り上げてでも相手をねじ伏せようとする。強くなんかない、話す力ばかり身に付けた弱虫。どこまでも自分さえ良ければいいという自己への執着のためだけに行動しているわたしは、一体どんな親になるのか。本当に気を付けなければ。 (文責:た)