今週の一週一言 10 月26日~11月1日 計画のない目標は ただの願い事にすぎない サン=テグジュペリ・・・・1900年~1944年。フランスの作家、操縦士。 代表作『夜間飛行』、『星の王子様』など多数。 【如是我聞】 一見すると、この言葉は、『星の王子様』を書いたサン=テグジュペリの言葉らしくない。どこか大人の賢しらな処世術と打算を感じさせる。目標に向けて綿密な計画を立て、それを一つずつ実行していく姿勢がなければ、どんな立派な目標も、「ただの願い事」にすぎず、決して実現することはないと。「お説ごもっとも。言い返す言葉もありません」と少しげんなりしてしまう。私自身も教師としてそんな言葉を生徒たちに言ってきたようにも思うが、あまり好きになれない言葉だ。 しかし、レーダーもない時代、無蓋の飛行機に乗り、前をよく見るために風防ガラスから身を乗り出して郵便飛行機を操縦していたサン=テグジュペリにとっては、先輩パイロットの経験を聞き、目印を地図に書き込み、徹底した飛行計画を立てて目標飛行に臨むことは、無事に郵便物を輸送し、自らの命を守るために欠くことのできない重大事だったのだろう。その上、そんな用意周到な計画の上に実現した目標には、深い感動と驚嘆が伴っていたことは、自らのパイロット経験をもとに書いた『人間の大地』を読むとよく分かる。夜間飛行中に垣間見られる奇跡のような光景が彼の心に刻まれる。「闇の大海原に瞬く光の一つ一つが、今、そこに人間の意識という名の奇跡が存在していることを教えていた」と。そして、「絆を取り戻そうとしなければならない。平原のそこここに燃えている灯のいくつかと、心を通わせようとしなければならない」という彼の「願い」が語られる。サン=テグジュペリは、決して単純に「願い事」を否定しているのではない。計画がなければ大事な「願い事」も実現することなく終わってしまうと言いたいのだろう。 しかし、私は、このごろ、それでもいいと思うようになった。60歳を過ぎたせいか、「願い事」は願い事のままでいいのではないかと。大切な願い事を持ち続け、心の中で温め続けていることが自分にとって、また自分を取
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