今週の一週一言 5月21日~5月27日 幸福は身体にとってはためになる。しかし精神の力を発達させるものは悲しみだ。
マルセル・プルースト…フランスの作家。小説『失われた時を求めて』は「世界一長い小説」としてギネス世界記録に認定されている。 |
【如是我聞】
一週一言史上最も書けない言葉に出会ってしまった。去年簡単に引き受けてしまったことをものすごく後悔している。逆境は精神を発達させる!?逆境真っ只中のわたし。まだ何の見通しもない。この美しい名言は今のわたしには正直しんどいです…ので、しばし現実逃避をさせてください。
特定の香りがふいに過去の記憶を蘇らせることがある。「プルースト現象」だ。小説『失われたときを求めて』の中で、主人公が紅茶に浸したマドレーヌを口に入れた瞬間、過去の記憶が鮮明に思い出されるという場面が元になっている。
私たちは、今覚えている記憶が実は本当ではないかもしれない、なんて考えたことがない。しかしプルーストは、先程の主人公にあったような、無意識的に呼び起こされた記憶こそが真実なのだ、と言う。そして、そのきっかけは香りなのだと。脳のことはよく知らないが、五感の中で臭覚だけが、直接大脳辺縁系を刺激するからだそう。香りだけが自分の意志の届かぬところで記憶を蘇らせるなんて、なんともロマンチックだなぁ。(現実逃避しています。)
しかし、なぜ人間は忘れてしまうのか。塾の先生がエビングハウスの忘却曲線を書いて、「忘れる前に振り返ろう」とよく言っていた。意味がわからないまま覚えたことは、1時間後には50%以上を忘れるんだと。勉強は振り返りが大切だが、人生は振り返る必要があるのだろうか。忘れたいこともあるのに。
さて、逆境が召喚した超ネガティブなわたしには、ちびまるこちゃんの父、さくらひろしの言葉がグッとくる。
「生きるってことは忘れることよ。人間ってのはよぉ、物事全部覚えてたらかえって苦しくって生きていけないもんよ。」
彼がわたしと同い年ということは信じ難いが、呑気に見せかけて実は色々な経験をしてきたのかもしれない。そしてその娘まる子の「わたしには今しかないよ。今を生きる女なんだよ!」と言う言葉に笑って、悩んでも仕方ないからもう少しやってみようかと前を向かせてもらう。
いつかこの今が遠い過去として思い出されたとき、あんなこともあったなと懐かしめるかな。そのとき、同じように大変な思いをしている人にそっと寄り添えるかな。そのきっかけは、今日のお昼に食べたレモンのパスタ?それとも今貪り食べている、このブラックサンダーの香りか。(笑)
(宗教・英語科 髙橋愛)
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