一週一言インデックス

2017年2月27日月曜日

聞思して遅慮することなかれ

今週の一週一言
                                  月20日~2月27日
(もん)()して()(りょ)することなかれ
                           
親鸞[1173-1262・・・浄土真宗の宗祖。9歳から29歳まで比叡山で修行するも、下山の道を選んだ。その後、師法然と出逢い「()(しん)」したという。しかし、35歳のに師とともに弾圧をこうむり、罪人として越後に流された。流罪後は北陸・関東地方で伝道し、62、3歳の時に京都に帰った。90年の生涯をみると、生没の地、師との出逢いの地である京都よりも、他の地域で過ごした時期の方が長いことに気づかされる。
【如是我聞】
「仏教って変わった教えだなあ」。僕は大学の講義中にふと思った。それは、次のような話を聞いたからであった。ブッダが生きていた当時の仏教教団は、ブッダと同じ出家した者を中心に成り立っていた。ただし、生産活動を不要とみなした彼らは、生存に必要な最低限の食べ物などを、出家していない人々(いわゆる在家)の施しから得るしかなかった。もちろん等価交換ではないが(交換ですらないだろう)、出家者が、食べ物などを施してくれた人に直接できる行為は〝はなし〟であった。つまり、仏教は誕生したときから、出家しない・出家できない人々の支えになりつつも、それらの人々に支えられて存在する宗教だったのである。
こんな素敵な仏教にまつわる話を聞きながら、僕は思ってしまった。「じゃあもしも、世界中の人がブッダに憧れて出家したら・・・」。そうなれば、支えてくれる在家信者がいなくなるので、出家者たちは自給自足するのかな。でもみんな出家しているから子孫を残さない。となると、出家者全員の寿命がきたら人類は滅んでしまうんじゃないか??「ブッダを理想としているのに、みんながブッダのようになったら破滅しちゃうなんて、なんか変テコな教えだなあ」。講義後、このことを友人に話したら即座に一言。「そんなこと考えてどーすんの?まずブッダなれへんでジブン」。あっ!そっか!

悲しきかなや自分の妄想。勝手にもしもの話をふくらませて、肝心の自分と現実に考えが届いていなかった。そもそも、全ての人が同じ生活スタイルをすること自体おかしーべよ。ブッダも「人類みんな出家しろ!」なんて言ってないしね。変テコなのは僕でした。トホホ。
けれども、このとき僕は少しこだわって考えた。仏教はブッダ(釈尊)という「人」が「人」に説いた。そして、ブッダの死後も人々が繋げてきた「生」の歴史とともにあった。要するに仏教は、「人が生きること」のなかで意味を持つ教えなのだ。そこでハッと思った。では、仏教は人に、僕に、どのような〝生き方〟を指し示す教えなのだろう。
紀元前5世紀頃のインドという特定の状況のもとで成立した仏教。この教えは、時代や地域をこえて広く伝えられた。出家・在家を含めた教団のあり方も、ブッダの〝はなし〟を聞き伝えた人々の歴史を通じて多様に変化してきた。しかし、伝えられた〝はなし〟(経典など)に真摯に向き合った人々は、「仏教」と称された多くの教えのなかから、その本質を探したに違いない。僕が生まれた日本にも、伝わってから約1500年続く仏教の歴史があり、知っておくべき仏教者たちが何人もいる。ただ、僕は、僕の知りえたわずかな範囲で、やはり親鸞という人物の理解した仏教(真宗)に驚くのである。

「聞思して遅慮することなかれ」。これは、親鸞の主著『教行信証』のはじめの部分に出てくる言葉だ。「聞いて受け取った教えに対して、自らの計らい・疑いをあれこれ差し挟んではならない」というような内容だと思う。意訳しても、自分にとっての意味を考えるのは楽じゃない。でも、どうしても気になることがある――親鸞は何を「聞思」したのだろうか?――ひとつだけ言えるのは、親鸞がそれを「(せっ)(しゅ)()(しゃ)(しん)(ごん)(ちょう)()()()(しょう)(ぼう)」と表現していることである。ヒーッこれまた難しい。
とはいえ、おそらくこうなのであろう。親鸞は、「摂取不捨」すなわち「全ての人が平等に救われる」という〝はなし〟を、歴史世界を超えた真の教えとして「聞思」した。つまりは、その〝はなし〟を、自らの計らい・疑いを差し挟まずに受け取り、生き抜いたのだ。たとえ自分たちが、平等な救いとは無縁の弾圧にさらされても。だとすれば、僕は親鸞の〝生き方〟を、もっと知りたいと思わずにはいられない。

(文責:社会・宗教科 北畠 浄光)




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