今週の一週一言 2月13日〜2月19日 悪魔は誘惑しない。誘惑するのは自分自身である。
ジョージ・エリオット(1819〜1880) イギリスの作家。本名はメアリー・アン・エヴァンズ。女性作家は陽気なロマンスしか書かないという固定化されたイメージから逃れるため男性名のペンネームを使用した。彼女の作品である『ミドルマーチ』は英語で書かれた最高の小説のひとつに数えられている。 |
【如是我聞】
イギリスの作家であるジョージ・エリオットの言葉であれば、原文は英語であろうと思い、まずはインターネットで調べてみた。
No evil dooms us
hopelessly except the evil we love, and desire to continue in, and make no
effort to escape from.
『急進主義者フィーリクス・ホルト(Felix Holt, the Radical)』1866
見つかった英文を今流行りのDeepLにかけてみると、「私たちが愛し、続けたいと願い、そこから逃れようと努力しない悪を除いて、私たちを絶望的に破滅させる悪はありません。」機械翻訳の精度がここまで向上したことに感動しながら、今回のテーマとなった日本語とは少し異なるなぁなんて思った。
ここで使われている“evil”ってのは“devil”とスペルも意味も似ているなぁなんてことを思いついてしまった。そこで、最近ハマっている単語の歴史(語源)の深掘りをしてみることにした。まず、ジーニアス英和大辞典を見てみると、evilは「12世紀以前に初出し、古英語のyfel[限度を超えている]が原義」とあった(ちなみに昔のfは/v/とも発音されていたので、今の綴りとも合致する)。devilもほぼ同じ綴りなので、同語源ではあるまいかと思い、同辞書を当たると、「12世紀以前に初出し、ギリシア語のdiabolos[悪口を言う人(悪いやつ→悪魔)]が由来」とあった。おお、元となる言語すら違っていた。
続けてOxford Advanced Learner’s Dictionaryの語源コーナーも見てみた。evilに関しては特に新しいことは見つからなかった。devilはまた面白いことが見つかった。「古英語dēofol由来である。(後期ラテン語経由、ギリシャ語のdiabolos[非難者、中傷者](ヘブライ語のśāṭānから翻訳)(dia[渡る]+ballein[投げる]からなる diaballein[中傷する]由来)」と書かれていた。ほお、diabolosとSatanって同じだったのか。
やめておけばいいのにもう一つ辞書を見てみたくなった。今度は語源用の辞書であるOnline Etymology Dictionaryを使った。evilにも少し新発見。「語源となったyfelの元は原ゲルマン語のubilazでbad, ill, wickedくらいの意味で使われていた」ようだ。そして、devilを見ていると、「ギリシャ語とラテン語の聖書ではdiabolusとdemonが使い分けられていたが、英語などゲルマン系の言語では統合された」とあった。えっ、今度はdemonも調べないといけない。。。
いや〜、調べれば調べるほど言語の沼にハマっていってしまう。それにしても、多くの人にはあまり興味がなさそうなことをくだくだしく書き続けてしまった。うう、しかもこんな授業に直接関係ないことを子どもたちへもベラベラ話したくなってきた。これもすべて悪魔の誘惑のせいに違いない。
(英語科 杉原一輝)
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