一週一言インデックス

2022年5月9日月曜日

一位と最下位との差なんて大したことねーんだよ。 ゴールすることとしないことの差に比べりゃ。

今週の一週一言

                                  59日~515

一位と最下位との差なんて大したことねーんだよ。

ゴールすることとしないことの差に比べりゃ。

小山 宙哉『宇宙兄弟』

小山 宙哉…日本の漫画家。宇宙兄弟は雑誌「モーニング」にて現在も連載中。

【如是我聞】

 僕が大学生の頃の話である。僕は個別塾で塾講師をしていた。個別塾というのは塾講師と受け持つ生徒との関係性が重要である。生徒と良い関係が築ければ、生徒の学習意欲が上がり成績向上につなげられるのだが、その逆も起こり得る。塾長と生徒の保護者はその部分をよく見ており、塾講師の中でランク付けをしてくる(塾講師にそれが直接伝わるわけではないが)というように、僕が勤めていた塾はわりと厳しい競争社会であった。僕は「どうせやるなら一番の講師になってやる!」という気持ちで受け持つ生徒と関わり、日々指導に励んでいた。

 そんなある日、塾長から「高3の受験生、見てくれへん?」と依頼を受けた。高3受験生を担当するなんて話は、やはり上の方から信頼されていなければ基本回ってこない。僕は初めての受験指導でかなり不安ではあったものの、「やっと頼りにされるようになってきたな!」と感じ、二つ返事で承諾した。その生徒とは幸運にも意気投合して、指導する傍ら休憩時間に雑談をして、僕は充実した時間を送っていた。生徒は僕が言ったことに真摯に取り組んでいたこともあり、次第に成績も上昇していった。僕は「この生徒は第一志望の大学に合格するだろう」、そう確信していた。僕はその生徒に合格してほしいという気持ちと塾講師として一番の結果を出したいという気持ちで、受験当日まで全力で指導にあたった。

 受験が終わって、生徒が結果を報告してくれた。結果は「不合格」であった。話を聞くとどうやら問題が昨年までと比べて難化したことと体調が受験時良くなかったということらしい。僕は指導していた立場として、その生徒に対して申し訳ないという気持ちには当然なったのだが、それ以上に僕自身が塾講師として結果を出せなかったことの悔しさが自分の中に生じたのを覚えている。そんな僕に生徒は、「先生、ありがとうございました。先生のおかげで最後まで頑張ることができました。結果は残念だけど、後悔はありません。」と伝えてくれた。

 僕はこの言葉を聞いてはっとした。自分は結果を出すことだけを考えていたことに気づいた。自分はともかく、生徒は最後まであきらめずに頑張っていたではないか、と。僕は途端に自分が恥ずかしくなった。この経験から僕が学んだことは、「結果はどうあれ、何事においても最後までやり遂げれば、その頑張った事実は必ずどこかの場面で活きてくる」ということだ。「その人の人生なんやから何をしてもいいやん、何かを諦めるもよし、最後までやるもよし、全部自由やろ。」という声もあるだろう。僕もそれには同意する。それに一つ僕が付け加えるとするならば、何をするにしても一位であれ最下位であれ、諦めずにゴールにたどりつけば何か見えてくるし、途中でリタイアしたら「あの時頑張っておけば…!」という後悔が残る可能性がある、ということになるだろう。その生徒とはそれ以来会っていないが、後に風のうわさで、最終的に第二志望の大学に進学し、素晴らしいキャンパスライフを送って自分がしたかった仕事に就くことができたと聞いた。きっとこの大学受験での経験が生徒のその先の人生に良い影響を与えたに違いない。僕自身もあの時頑張って指導にあたった経験があったからこそ、今こうして大谷で働けているんだと思える。「すべての出会い、縁に感謝しながら、何事もあきらめずに、スモールステップでいいから最後までトライしよう!」そう思いながら不器用なりに生きている、今日この頃の僕である。

(英語科 木本)





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